糖尿病治療には「インスリン注射」が広く使われています。
しかし、患者さんにとって毎日何度も注射を打つことは大きな負担です。
そのため、人類は100年以上前から
「インスリンを飲み薬にできないか」という研究を続けてきました。
世界中の研究者が挑戦してきましたが、長い間、実用化には至りませんでした。
ところが2025年、熊本大学の研究チームが、
その壁を突破する可能性を示す研究を発表しました。
なぜインスリンは飲み薬にできなかったのか
インスリンは、51個のアミノ酸からできた大きなタンパク質です。
そのため、口から飲むと次の3つの壁に阻まれます。
1. 胃酸で壊れてしまう
胃の中は非常に強い酸性(pH1〜2)です。
インスリンは胃酸にさらされると、すぐに変性してしまいます。
2. 消化酵素で分解される
さらに小腸では、ペプシンやトリプシンなどの消化酵素によって、
インスリンはアミノ酸レベルまで分解されます。
こうなると、インスリンとしての働きは失われます。
3. 腸から吸収されにくい
仮に分解を免れても、インスリンは分子が大きいため、
腸の壁を通過して血液中へ入りにくいのです。
このため、「インスリンは注射でしか使えない」と考えられてきました。
熊本大学の新しい研究
熊本大学の研究チームは、「DNPペプチド」という特殊な物質に注目しました。
これは7つのアミノ酸が輪のようにつながった特殊なペプチドです。
このDNPペプチドには、次の特徴があります。
・腸の壁を通過できる
・消化酵素で分解されにくい
特に重要なのは、「D型アミノ酸」という、
人間の体内ではあまり使われない特殊なアミノ酸でできている点です。
そのため、消化酵素に認識されにくく、壊れにくいのです。
マウス実験で大きな成果
研究チームは、
・インスリンとDNPペプチドを一緒に飲ませる
・インスリンにDNPペプチドを結合させる
という方法をマウスで試しました。
すると、どちらの方法でも血糖値が大きく低下。
さらに、1回の投与で約3日間にわたり血糖コントロールが続きました。
従来は、飲み薬として効果を出すには「注射の10倍以上」の
インスリン量が必要でしたが、この方法では約3倍程度で効果が確認されました。
これは、実用化へ向けて大きな前進と考えられています。
100年前の「菊芋」の話
実は1920〜30年代、アメリカの人物エドガー・ケイシーは、糖尿病患者に対して、
「菊芋を食べなさい。あれは自然のインスリンだ」
と語っていました。
当時は科学的根拠のない直感的な話と考えられていました。
しかし現代の研究によって、この考えが完全な間違いではなかったことが分かってきています。
菊芋に含まれる「イヌリン」
菊芋には「イヌリン」という食物繊維が豊富に含まれています。
近年の研究では、イヌリンに以下の作用があることが報告されています。
・食後血糖値の上昇を抑える
・糖の吸収をゆるやかにする
・腸内環境を改善する
・血糖コントロールを助ける
大阪大学の研究では、白米を食べる前に菊芋を摂取すると、
食後血糖値の上昇が抑えられたという結果もあります。
菊芋を食べる際の注意点
イヌリンは加熱で減少することがあるため、
・生ですりおろす
・サラダとして食べる
などの方法が勧められます。
ただし、食べ過ぎると腸内で発酵し、
・ガスが増える
・お腹が張る
などの症状が出ることがあります。
そのため、最初は少量(30g程度)から始め、徐々に増やすのがよいとされています。
サプリメントの場合も、最初は3〜5g程度から始めるのが無難です。
まとめ
注射から“飲む治療”へ、糖尿病医療は変わるかもしれない
・「飲むインスリン」は100年以上研究されてきた難題だった
・熊本大学の研究により、実用化の可能性が見えてきた
・菊芋のイヌリンには、血糖コントロールを助ける作用がある
・伝統的な知識の中にも、科学的に意味のあるものが存在する可能性がある
今後、注射ではなく「飲むインスリン」が実現すれば、
糖尿病治療は大きく変わるかもしれません。